第4回インタビュー : 家庭のファイナンシャル・プランナー しなやか希業コンシェルジュ 小谷晴美さん

「ファイナンシャル・プランナーとして、相談・セミナー講師・執筆を行っています。」

安達美由紀(以下、安達):今の仕事の現状について、お聞かせください。

小谷晴美さん(以下、晴美さん):ファイナンシャル・プランナーとして、相談・セミナー講師・執筆を行っています。最近は、特に2つのことに力を入れています。

一つは、「家庭のファイナンシャル・プランナー」の養成です。昨年の6月に開校して、現在3クラス18名の方が月1回のペースで参加しておられます。

一昨年の夏、友人から、FP資格の勉強をすべきかと相談されたのがきっかけだったんです。理由を尋ねたら、お子さんが大学生になり学費として大きなお金が動いて急に不安になったそうなんです。これまでは、なんとなく家計が回っていたけれど、下のお子さん達もいらっしゃるし、自分たちも後10年で退職。お金のことをちゃんとしなければと思ったそうなんです。それで、お金について体系的に勉強しながら、1年くらいかけてわが家の家計を把握し見直すサークル活動のような講座を提案したんです。

もう一つは、女性起業家さん向けの相談やセミナーです。私がお会いする起業家さんは、家庭に軸足を置きながら自分らしく働きたいという方なんです。お子さんの成長に合わせて仕事を育てておられたり、扶養の範囲内でできることをやって、家族との時間を大事にされていたり。そういう方は「起業」という言葉に抵抗を感じる方も少なくないんです。「『起業』って、いやいや別に起こしてないし」って。しっくりくる言い方がないかなあと思って「希業」という漢字にしてみたんです。子育てと家庭とのバランスをとりながら、しなやかに、未来に希望を持って社会に貢献する、そんな働き方を「希業」と呼んで、こんな方程式を作ってみました。

希業 = しなやか × ( 趣味 + 利他 )

しなやかという言葉は、その時々のライフスタイル、子どもの成長や家庭の状況に合わせて、「働き方」や「やり方」を変えていくという柔軟さを表わしています。そんな希業家を応援したいと思っています。私自身そうでしたからね。子どもが小さい頃は、いざという時は代わってくれるような仲間がいる環境でセミナー講師をしていました。子どもの成長とともに徐々に仕事の幅を広げていき、出張などもお引き受けできるようになってきました。中学生になった今は、もうこっちが構ってもらえないくらいです。関われる時に関われて良かったなあって思います。

小谷晴美さん | 心財育成株式会社

「やりたいことが、わからなくなったからです。」

安達:理念をどうして受講しようと思ったのですか?

晴美さん:やりたいことがわからなくなったからです。大人向けのマネーセミナーもやり、子どものマネー教室もやり、時には金融機関で研修もやり。来る仕事を「成長の糧」と引き受けているうちに、やっている事がバラバラな気がして、私の役割は何なんだろうと目的を失ったような状態になっていました。

「仕事と健康と人間関係と、よりバランスよく考えるようになりました。」

安達:受講されて変化はありましたか?

晴美さん:そうそう、受講したときは家族のことも大変だったんですよ。(笑)仕事というよりは、いろんなことで迷っていましたね。子どもの受験もあり、家族関係もギクシャクした時期でした。こんな時に仕事をしていてもいいのかな?という気持ちもありました。仕事上の理念を明確にする目的で受講したんですが、「仕事」以上に「家庭」に焦点があたっていることに気付きました。受講後、仕事と健康と人間関係と、よりバランスよく考えるようになった気がします。

そう言えば、個人相談でも最近お金の話は案外短くなってきましたね。(笑)これからやっていきたい仕事の話とか、家族の話になってくるんですよね。生き方、暮らし方、最終的にはそういうところの話の聞き役になれて、自己決定のサポート役といった存在になれたら嬉しいなぁと思います。子育てのことや家族のコミュニケーションのことも自分が頭をたくさん打っているからこそ、できる物の見方もあったりしますから、一緒に考えていけたらいいなあと思いますね。

| 心財育成株式会社

安達:あれからずいぶん変化されたんですね。

晴美さん:ねえ~。本当に変わりました。娘とは相変わらずバトルが絶えませんが、独り相撲になってるんですよね。(笑)怒って小言を言っていると、ふと見たら寝てるんですよ!「もう!」って掃除機をガーってかけながら、掃除機にあたってたんです。(笑)先日も娘に「試験どうやった?」と聞くと、「なにそれ?美味しいの?」とはぐらかされたり、そういう腕だけは上がってるんですよね。(笑)

「家庭のファイナンシャル・プランナーの養成を続けていき、卒業後も学び合い相談し合えるコミュニティーづくりをしたいです。」

安達:今後のビジョンを聞かせてください?

晴美さん:家庭のファイナンシャル・プランナーの養成は、ライフワークとして続けていきたいですね。そして卒業後も学び合える、相談し合えるコミュニティづくりができるといいですね。暮らしや人生の問題って、お金のことだけじゃないと思うんです。それぞれの経験や知恵を分かち合っていける場があるといいなあと。現在、ご参加の第1期生の中には、社会保険労務士さん、薬剤師さんやケアマネージャーさん、社会福祉士さん、学校の先生などなど、専門分野を持つメンバーもいらっしゃいます。また、お子さんが社会人の方など子育ての先輩、介護の経験者もいらっしゃいます。暮らしの中で何か困った時には、「とりあえず聞いてみよう」と気軽に相談できるような場があると私も心強いですし。

| 心財育成株式会社

安達:何か伝えておきたいことはありますか?

晴美さん:「理念」を定めるって必要なことだと思うんですけど、日々仕事に追われてしまって、なかなか深く考えられないんですよね。強制的に考える時間をとって、専門家に心の奥にあるものを引き出してもらったからこそ出てくる言葉があるんだなと思いました。「家族」なんて当たり前すぎて、「理念」に出てくると思わなかったですからね。

でも、理念ができたときは、「これ、するんかな私・・・」と、正直、違和感があったんです。それが後からじわじわ来た感じですね。振り返ってみたらご縁があったことって、結局「家庭」に軸足があったんですよね。去年の秋くらいからやっと「家族力」がしっくりくるようになって、今回取材の依頼があって、そうそう理念理念て思い出しました。(笑)

安達:あとからじわじわくるのよね。意識は遅いからね。

晴美さん:女性起業家の支援をしていても、「私税理士ではないし」と違和感があった部分もあるんですけど、理念を思い出したときに「家庭経営」の中で女性が働く働き方の一つ、女性の生き方の一つなんだなあ、って気づいたんですね。

税務処理でもなく、経営コンサルでもなく、家庭の経営者として自立していただく一つの手段として「希業」を捉えたら、ストンと落ちました。そして、暮らしの安心・安全、希業の安心・安全のために、マネーリテラシー(金融の知識や判断力)の向上があると思うんですね。

そう言えば、私教育学部出身なんですよね。お金の知識と判断力を身につけていただいて、安心して暮らしていける金融経済教育の一端を担えたらいいかなと思います。

そう考えると、大人向けとか、子ども向けとか、やってることがバラバラではなかったんですよね。自立して生きていくために必要な力として、「稼ぐ力」と「金を管理する力」は車の両輪のようなものなので。その土台にあるのが温かな人間関係(家族)になるかもしれません。対象が誰であれ、「幸せに生きていける人」をふやすことに携われたら嬉しいです。そのためにも、私自身がまだまだ学ばなければとも思います。

| 心財育成株式会社

安達:繋がりましたね。教育のことも、お金のことも、家族という足元のことも

晴美さん:そうですね。〇〇の専門家でなくても、とっつきにくいお金の話を楽しく、分かりやすく伝える翻訳機のようなFPでもいいかなと。私らしく、ゆるく。(笑)暮らしの「不安」を「やる気」に変える家庭のファイナンシャル・プランナーでいたいと思います。

無意識から出てきた『お金の知識と家族力』という言葉が、1年半という時間をかけて意識と繋がり、行動し始めている晴美さんはとても穏やかな表情で、なおかつ教育者として凛とした姿にも見えました。これからが更に楽しみです。小谷晴美さん、ありがとうございました。

《しなやか希業コンシェルジュ 小谷晴美さん》

| 心財育成株式会社

インタビュアー:安達美由紀・撮影:林静香

ライン

自分の人生理念を明確にしてみたいと思った方は、こちらへ↓

詳細ボタン